親指シフト(NICOLA配列)と歴史的仮名遣との相性に関するいちユーザーの私感。(過去ツイートまとめ)


7月10日

 

 

親指シフト対応の配列定義ソフト「やまぶき」で「ゐ」「ゑ」を空いた面に入れて、歴史的假名遣ひモディファイの親指シフトNICOLA配列)をしてみたことがありますが、使ひ心地が悪くて諦めた経緯があります。
親指シフトはそもそも現代仮名遣いの文字資料の仮名頻度データを元に最適化されてゐるものなので、歴史的假名遣ひではハ行の頻度の大きな違ひなどで、親指シフト特有の快適さはかなり損なはれてしまひます。


例へば、親指シフトホームポジションの中段が最も打鍵頻度が高く、下段ではかなり打鍵頻度が低いので、現代仮名遣いでは大部分を上・中段だけで処理することができ、指の移動の負担がかなり軽減されてゐます。(個人的には喧伝される入力の「速さ」などよりも、この「手の負担の少なさ」の方こそがこの入力方式の最大の利点だと感じてゐます。)
しかし、この仮名の並びのまま歴史的假名遣ひで入力しようとすると、仮名の頻度や連接の組合はせの違ひのために、その長所を活かすことが出来ません。特にハ行假名は親指シフトNICOLA配列)では下段に集中してをり、歴史的假名遣ひでは下段での打鍵が増える上に、指遣ひの組合はせなどもややこしく滑らかさに欠け、親指シフト特有のメリットは殆ど感じられないほどに薄まってしまふ様に私には感じられました。
また、同様に親指シフト方式のTRON配列でも、歴史的假名遣ひに合はせたモディファイを試みましたが、結果は変はりませんでした。

 

さういふ経緯で、自分用には、この親指でのシフト方式を受け継ぎつつ、歴史的假名遣ひを考慮した配列(蜩配列)を半ば無理矢理自作して、それなりの解決には至ってはゐます。しかし蜩配列では、歴史的假名遣ひの特徴の他にも、自分の手や標準的でないキーボードの物理的特性、拗音省略などの実験的な試みなど、鍵盤入力に求める個人的なあれやこれやを詰め込み過ぎてゐるので、これをそのまま誰かに勧めることは到底出来さうにありません……

 

今のところは、QWERTY配列で、假名遣ひの違ひの影響も抑へられるローマ字仮名変換入力よりもコストのかからない方法は、さう簡単には見つけられないのではないか、などと考へてゐる所です。
対抗できる候補としては、Dvorak配列やそれに準じる配列でのロマかな編換入力が挙げられるでせうか。

 


尚、鍵盤文字入力の配列は多くの人が色々な解決法や独自方式を考案してゐますが、
http://www4.atwiki.jp/japanese_keybord_layout/pages/1.html
歴史的假名遣ひへの対応に関しては、まだまだ未開拓の分野で、様々な工夫の余地が残されてゐると思はれます。


現代において歴史的假名遣ひの普及・通用の向上を目指すのであれば、PCの入力も避けては通れない課題であるはずで、その点に関して、歴史的假名遣ひ使用者界隈の関心は少し薄すぎるのではないかと感じないでもありません。
鍵盤文字入力の変更や独自の工夫といふと、酷くハードルが高く感じられるかもしれませんが、いまでは、先に触れた「やまぶき」など、比較的容易に実現できるツールを無償提供してゐる方もいらしたり、ハードルはかなり低くなってゐると言へさうです。
何といってもPCのシステムやらプログラミングやらまるでド素人の私がやってゐるくらゐなので、その辺りの知識も豊富で、私より才能もセンスもある多くの方々には、お茶の子さいさいといふものではないでせうか。