音便ってことでいいであないか。 「にゃ」を「ねあ」と綴りたい、とある対話。

8月4日

「ねば」の意味の助動詞的な「にゃ」、日国精選版で確かめたらやはり「ねば」の転だった。
ここは穏便扱いで、「ねあ」といふ表記がしっくりくると思ふんだけど、どうかなあ。
歴史的仮名遣ひでも「ねあ」の母音連続で /nja(a)/ の音を表す正則を設けててくれても良かったのに、なんて妄想する。
多分、「えあ」の母音連続は語中には出現せんのでない?

/ea/の母音連続が出現しないといふことは、つまり意味の弁別を示す/ea/ VS /jaa/ の対立が音韻体系として存在しないと言ふことなので、表記を「えあ」にしても、混同の心配はない、といふこと。

これが仮名遣ひの知恵といふものであって。

「えう」とか「いう」とかも、さういふ原理に則って決められてゐる。

「きょう」とか「しゅう」とかは、単純に1文字ぶん手間とスペースが取られるやうになっただけで、何も改善されてゐないんだ。


@foolkid 表語性や文法機能の表示といふ歴史的仮名遣ひの方針にも適ってゐますし、何より感覚的に妙に気持ちが良いのですよね、これ。


「えあ」=/ja/ がなんか良いなあ、とか最初に思ったのは、まだ仮名遣ひとか意識してないころに何かの漫画で誰だかの詩人の詩が引用されてゐたのを見たときで、確か「〜しなけあ いけません」を連発するものだったのを憶えてゐる。
しかし「けあ」の場合だと、「けば」といふ活用形は多分なくて、「ねあ」のからの連想で「えあ」が一般化され、「けれ+ば」の「れ」が省かれて「け」に直接つながれたもの、と考へられさうなので、由来としてはたぶん少し事情が異なる。


「えあ」が凄くしっくりくる例としては他に「すれあいい」とか「來れあいい」とか。


「えあ」が適用出来る別のパターンとしては、「エ段+は」の場合で、「それは」が「それあ」、「これは」が「これあ」など。
「では」が「であ」もこれに入るな。
「は」から/h/が落ちて/a/になってつづまるパターンは、他に
「知らざあ言って聞かせやせう」の「ざあ」で、これは「ずは」から転じたもの。


断定の助動詞の「ぢゃ」も、「であ」が語源そのままらしく。
「にて+あり」→「んで+あり」と辿ってきた後、ここでまさかの終止形語尾「り」が脱落、といふ珍しいパターンなのだとか。


@foolkid 日本国語大辞典精選版引いてみたら、「きゃ」は「ければ→けりゃ→きゃ」といふ立場を取ってゐるやうでした。
電子辞書で精選版とはいへ日国を素早く引ける、ちふのは良いものだなあ。


@foolkid さういへばさうですね。失念してゐました。


歴史的仮名遣ひユーザーのための偽装現代仮名遣いロマ仮名入力」、偽装効果の方は、歴仮名→現仮名の変換規則に一貫性が無いせいでいまいちだけど、それぞれのバージョンとして、長音の省入力がとても便利なので、それはそれで中々快適。
「ん」「っ」の音便を1キーに入れるのもとても快適。
あと、Fキーをハ行に充てるのは、特に拗音の際に素晴らしく快適。
普通の日本語ロマ仮名入力でも標準化してくれないものかね、これ。


@foolkid どうなんでせうね、手元の辞書には細かい経過までは載ってゐなくて、用例も近代のもの一つだけなので、よく分からないのです。


@foolkid ふと思ったのは、「け」に拗音のクヲリティが混ざっていて、/kje.rja/といふ発音になってゐたとしたら、確かに言ひにくそうで脱落が起こってもをかしくはないかな、なんて気もします。
子音kの場合は口蓋音化も起こり易さうですし。
素人の憶測ですけど…。


ちなみに鳥取弁では、「せにゃ」とか「來りゃ」とかは、ア段で拗音が抜けて「せな」「來ら」になったりします。
「せにゃならん」とかはさらにaの音も消えて「せんならん」とかになっちゃったりします。


「行かな」は「行かにゃ」の拗音が落ちた形にて御座りまする。