ヴ メモ


というのは、文字使用という観点からすると、結構智慧が効いていて面白い。
もともとラテン文字の V は、u音を表す母音字であったが、半子音として用いられる場合に(つまり「わ」行)、しだいに有声の両唇摩擦音化し(つまり日本語の「ふぁ」行音の有声音)、それがさらに有声の歯唇摩擦音(英語などの「ゔ」音)へと移行して定着した。
ラテン文字は、後期ラテン語へと発展する過程で、Vを半子音字に譲り、Uを新しく母音字として立てた、という点が異なるにせよ、仮名書きで「ヴ」とするのは、このラテン文字の発展史を反映しているようで、ちょっと面白いのです。たぶん、「わ゛」行を考えた人は、きちんとこのへんの事情は心得ていたのでしょう。
ちなみに、ドイツ語の単語の語頭では、v音に当てられたこの文字が、無声化にともなって、f音を表す文字として定着している。
また、両唇摩擦音が、両唇破裂音、つまりb音と混同されることもしばしばあったようで、ラテン語の habere がフランス語(オイル語)では avoir になったりなど。もひとつちなみに、英語の have は完了の助動詞として仏 avoir と同様の用い方をするが、have と語源を共有するラテン語は take を意味する capere で、ぜんぜん別の言葉であったらしい。